スリップを回避する14の方法

 スリップはSCAのメンバーの身に起こりうる最も苦痛なことです。しかし、その場の満足を求める性的強迫症者にとって、それはいたって自然なことです。私たちの病気は巧妙で、不可解で、油断がならず、自分を騙して服従させる新しい方法を常に探し求めています。

スリップしやすい性質

 私たちは、ときどき他人に気づかれることはあっても、私たちが常に認識できるとは限らない、スリップしやすい「性質」を持っています。例えば、いらいらしやすい、気落ちしている、人とのつながりを持てない状態などです。そして、私たちはこの性質を巧妙に働かせます。実際、私たちが自分をいいくるめてしまうと、必ずといっていいくらいスリップが起きてしまいます。したがって、私たちは、根深い習慣の傾向をやぶることを学ぶ必要があります。

 次のようなときに、私たちの防御は弱くなりがちです。

  • 物事がうまくいかないとき。
  • 物事がうまくいくとき。
  • 家族を訪ねるとき。
  • 家族を訪ねて戻ってくるとき。
  • 決断するのを避けているとき。
  • 何か――しばしばプログラムそのもの――によって打ちのめされたと感じるとき。
  • 人間関係の中にいるとき。
  • 人間関係の中にいないとき。
  • セクシュアルリカバリープランがうまく働いていないとき。
  • 何か秘密を持っているとき(Secretive)、(自分自身または他人に対して)虐待的であるとき(Abusive)、自分の感情がわからないとき(Feelings)、虚しさを感じているとき(Empty)(SAFE)。
  • 空腹なとき(Hungry)、怒っているとき(Angry)、孤独なとき(Lonely)、疲れているとき(Tired)(HALT)。

用心すべき危険信号

 性的強迫症は思考の病気であり、私たちの心の動きをたやすく完全に支配してしまいます。この病気は、したくない場合にさえアクティング・アウト(行動化) したいと私たちに思い込ませることができます。したがって、私たちは、この病気と同じくらい抜け目なく、巧妙になれるよう学習しなければなりません。次にあげる危険信号の一つ一つは、すべてのメンバーに当てはまるとは限らないでしょう。しかし、私たちは皆そのうちのいくつかを「自分もそうだ」と感じられるに違いありません。

  • たばこや飲み物が欲しくなる。
  • 強迫的に凝視する。
  • 強迫的にテレビや映画を見る。
  • 強迫的に買い物をする、食べる、クロスワードパズルをする、など。
  • コミュニケーションを絶って孤立していく。
  • 物事のスピリチュアル(霊的)な面を手放す。
  • 自分自身を見捨てる。
  • ミーティングに出る回数を減らす。
  • 「ろくでもない考え(Stinkin' Thinkin')」にふける。(例:誰もわかっちゃくれない)
  • 自己イメージが下がる。自分を弱らせるふるまいを強め始める。健康のための規律を放棄する。ひげをそらない、歯を磨かない、運動をしない、電話をかけない、家を 掃除しない、など。
  • 嘘をつくようになる―自分にも他の人にも。私たちは、無関係でささいなことまでも秘密にしてしまう。私たちは影の世界から出て現実の世界へと入っていきたくない。だから、あらゆる方法で世界の「非現実的な」側面を維持する必要がある。
  • 生活/人生のさまざまな場面からの逃げ場所を探す。

第一の犯人

 AAの文献によると、恨みが第一の犯人であるといえるでしょう。恨みは他の何にもまして性的強迫症者を破滅させます。なぜならば、私たちは「恨みをはらす」のにアクティング・アウト(行動化)以外の方法を思いつかないからです。アクティング・アウトは解決、武器、報復手段に見え始めます。そして、人々に彼らがどれだけ私たちを傷つけたかをわからせる方法に見え始めます。

 意識的にあるいは無意識に、私たちはスリップを正当化する理由を捜し出します。「最近ムシャクシャする」「誰も私たちを理解してくれない」「何もかもうまくいかないんだ」

 私たちは、孤独で、傷ついたように感じて、人々に仕返ししたくなってきます。通りでぶつかってきた人、上司、恋人、親、そして自分自身に。神にさえ。(そもそも、私たちが傷つき失望しているのは神の責任ではないでしょうか? ならば神だって傷つき失望するべきなのです)

 私たちは自分の怒りが正当だと感じ、それにしがみつきます。何があっても手離そうとしないのです。だから、私たちは性的強迫症の初期症状に気づくと、さらに怒ってしまうのです。

 私たちはまわりの人に対してキレやすくなります。さもなくば、私たちは外にではなく内側に爆発させて、怒りを抑えこみます。私たちは、内側では苦痛と恨みがくすぶっているのに、外側では全く冷静で分別があるように見えるでしょう。

 私たちは、苦痛を引き起こしている状況を治す方法を見つけるのではなく、らせん降下をし続けながら恨みを大きくしていきます。私たちはひそかに怒りを鎮めたくないと思っています。なぜなら、ライターの燃料がキャンプファイヤーのために役立つように、怒りは私たちの強迫的性衝動のために役立つからです。敵なしに猛威をふるってやってくる強迫的性衝動への道がどんどん広がるにつれ、私たちの人生におけるすべてのよいものは次第に効力を失います。

スリップの始まり

 このようなプロセスは度を強めていきます。不可解な力が私たちを乗っ取っているように見えます。また、私たちは、だんだんと健康のための規律を手放し、一種の催眠状態へ落ちていきながら、その力に魅了されるようになります。私たちは、以下のような、健康な思考を巧妙にむしばむ「儀式」にふけります。

  • 強迫的にマスターベーションをするようになる。
  • 下着を付けずに外出する。
  • 不自然に近隣をうろつく。
  • 出席する予定だったミーティングを休む。
  • SCAに近づかないようにする。
  • ミーティングに行くという考えを脅威に感じる。それは私たちが一番したくないことなのだ。
  • 過去の危険な行動が頭から離れないようになる。
  • アクティング・アウトするための服を着てみる。
  • ポルノグラフィーを隠し持つようになる。
  • スリップを合理化しはじめる。「年を取ったから」「既婚者はいつもセックスをしているじゃないか」「今週は悲惨だったなあ」
  • 電話をかけたくない。スリップを手放したくないし、誰にも取り除いて欲しくない。
  • 否認に満ちている。私たちは本当は全然性的強迫症者などではないと自分に言い聞かせる。誰でもこんなことをするし、外出して楽しく過ごすことは極めて正常だ、と。
  • あるいは「私は、他のSCAの人たちとは違う。彼らは私のことも私が必要とすることも決して理解できないのだ。この問題はプライベートなことで、私にはそうする権利があるのだ」というような考えを抱く。
  • SCAは敵に見え始める。「彼らはみんなとても独善的だ」「彼らにとってはよいものかもしれないが私にはよくない」「彼らは自分を騙しているのだ」
  • ちょっと見に行くだけだ、あるいは、今夜1回だけアクティング・アウト(行動化)して、明日SCAに戻るのだ、と自分に言い聞かせる。

 突然私たちは自動運転のような状態になります。私たちの足は、私たちを行くつもりのない場所へ連れて行くようになります。スリップから抜け出すチャンスはまだあるのです。しかし、それは私たちがいちばんしたくないことのように感じます。

スリップから抜け出す方法

 私たちは、衝動が満たされない不快感をすすんで許容しようとしなければなりません―これは信じられないほど困難なことですが。なぜなら、アクティング・アウト(行動化)しないこととは、新しい筋肉を鍛えるようなものだからです。それは、何かが間違っている、洗脳されている、恐ろしい誤りを犯していると感じられます。

 皮肉なことに、私たち性的強迫症者の多くは、表面的には気楽で柔軟な人のようにみえます。しかし、ことアクティング・アウトに関する私たちの考えを変えることについてとなると、地球上のいかなる力も私たちを止めることができないかのようにみえます。性的強迫症者の「鋼鉄の気まぐれ」を打ち破るためのいくつかの実用的なやり方がここにあります。

  1. 電話をかける。相手に迷惑だなどと思わないこと。電話は私たちがソーバーでいる方法の一つです。SCAは利己的なプログラムなのです。その中で私たちがすること(電話を含む)は、すべて自分のソブラエティのためなのです。多くのソブラエティを持った誰かに電話してみてください。危険なときには、「勝利者にしがみつく」ことがいつにも増して重要です。
  2. ミーティングに行く。たとえ行きたくなくとも、身体をひきずって―特に行きたくない場合には。そのことについて語るのではなく、行動すること。たとえアクティング・アウトしなければ死んでしまう、と感じていたとしても。心がよくなりたいと思っていなくても、あなたは「身体を持っていく」必要があります。たとえあなたがしたいと思う「もっと大切な」あるいはもっと刺激的な、もっと楽しい何かがあったとしても、ミーティングに行きましょう。気づかないうちに、あなたの価値観は癒されていくでしょう。
  3. 第一ステップを踏む。「私たちは性的強迫症に対して無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた」という言葉を、その意味が心にしみていくまで繰り返しましょう。自分が強迫症に対して無力であると本当に受け入れると、私たちはそれをハイヤーパワーに、スポンサーに、プログラムにゆだねられるようになります。
  4. 暫定スポンサーを見つける。関係をずっと続ける必要はないのです。困っていて助けを必要としている、と誰かに話しましょう。あなたがするべきなのは助けを求めることに尽きるのです。
  5. SCAの文献を読む。他のメンバーとコンタクトが取れるまで文献で乗りきることができます。また文献はプログラムについての知識を深めます。読むたびに新たな発見があって驚かされます。
  6. 自分のセクシュアルリカバリープランを読み返す。自分の設定した目標を思い出すことは、私たちがようやく抜け出し始めている混乱とひどい苦痛へ戻りたいという渇望を遠ざける役に立ちます。
  7. スリップを延期する。スリップをするのは後にしてまずは誰かに話しましょう。
  8. 祈る。あなたのハイヤーパワーからの助けを求めて祈りましょう―それをあなたが理解してもいなくても。とりわけ効果的なのは「平安の祈り」です。「神様、私にお与えください。自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを、変えられるものは、変えていく勇気を、そして、二つのものを見分ける賢さを」。緊急のときには、私たちの中には危機が去るまでこれをマントラのように唱え続ける人もいます。
  9. 習慣のパターンを打ち破ること。私たちは孤立していてはソーバーを得られません。私たちはどうしても破壊的な行動をやめられません。私たちはそれを健康的な新しい行動にとってかえなければなりません。多くの場合私たちはしばらくの間アクティング・アウトについてと同じくらいに、ソブラエティについて強迫的である必要があります。今までしたことのない創造的な行動を試してみてください。そうすることで、自分は健康的な行動がとれるのだ、ということがわかるでしょう。
  10. 90日に90回のミーティングを。これは「第一のことは第一に」という言葉の意味を学ぶための成功間違いなしのやり方です。何が何でもミーティングに出ることは、誘惑に屈したり好き勝手にやるという根深い習慣を打ち破る絶対確実な方法です。その習慣はとても根深いので、私たちの病気の表れというよりはむしろ私たちの本質であるかのように見えます。
  11. 深呼吸する。パニックが起きそうになったら、落ち着くまでゆっくりと深呼吸をしてみること。その他に、お風呂に浸かる、鏡を見て、自分に「大好きだよ」というなどの癒しのための活動もしてみましょう。
  12. やる気になる。スリップに屈するよりもスリップをあきらめる可能性に心を開きましょう。あなた自身の意思の力を打破することのできる方法など存在しない、と感じているかもしれません。しかし方法はあるのです。それは前向きに行動することによってのみなされるのです。やる気とは行動です。忘れないでください。希望がある限り未来はあるのです。
  13. スリップについてよく考える。自分自身に問いかけてみてください。スリップすることで自分が求めるものを本当に得られるのでしょうか? どれだけ興奮できるのかにこだわるのではなく、終わった後に必ずやってくるみじめさを思い出しましょう。
  14. 自分が性的強迫症者であることを受け入れる。スリップしたがるからといって自分を責めないこと。かといって、それに負けもしないように。

 私たち性的強迫症者のほとんどは、責任が生じるどのようなことに対しても根深い恐れを抱いています。なぜなら私たちの中の病気はそれにとても脅かされているからです。ミーティングに行きプログラムを行うことにより、私たちは少しずつ「私には責任がある」という考えを受け入れるようになります。最初は椅子を並べたり片付けたりといった小さなことに対して。それからオフィスを維持することに対して。それからメッセージを運ぶことに対して。そしてそれから―ゆっくりと、そしてたいていは気づかないうちに―私たちは自分がはじめて自分自身の人生に対して責任を果たしているということを発見します。

もしスリップしてしまったらどうすればよいのか

 できるだけ急いで電話を取り、何が起こったのかを誰かに話しましょう。最悪なのは、自分一人で抱え込んでしまい、その結果、恥と孤立があなたを次のスリップへ駆り立てる準備をしてしまうことです。

 ミーティングへ行きましょう。あなたを助けることができる人たちにあなたの痛みが共有されると思ってスリップのことを話しましょう。このプログラムと、このプログラムを実行している人たちを信頼してください。私たちはすべて性的強迫症の苦痛を経験したことがあり、そうでなければここにいなかったでしょう。私たちはお互いを裁くためにSCAにいるのではなく、ただお互いによくなるのを助けるためにSCAにいるのです。

 スリップから学びましょう。どのスリップも痛ましい、けれど非常に貴重な教訓を私たちに与えてくれます。私たちは、何が悪かったかを知るために自分のプログラムと生活を再検討する必要があります。それから、私たちは同じ誤りを再び繰り返さないようにしなければなりません。自分に以下のような質問をしてみましょう。

  • スポンサーはいるか?
  • そのスポンサーを適切に使っているか?
  • ステップに取り組んでいるか?
  • 仲間の集まりとつながりを持っているか?―ミーティングに行っているか? サービスを行っているか? ミーティングの後に仲間とお茶を飲みに行っているか?
  • 毎日誰かに電話しているか?
  • 自分のセクシュアルリカバリープランは厳しすぎないか? あいまいすぎないか? 柔軟すぎないか?
  • 自分の人生に前向きに取り組んでいるか?
  • セックスを健康的な要素として生活に統合するために何か努力をしているか?

 私たちの強迫的なセックスは、巧妙に包み隠されていますが、私たちがそれを開けると、いつも幻滅と痛みに満ちていることがわかります。自分の中の病気の恐るべき力を認めることによって、私たちはSCAの第一ステップというより偉大な力に自分を明け渡すことができます。そしてそれは、私たちが想像もできなかったような豊かで深いソブラエティの始まりとなりうるのです。